欠陥だらけの消費税 2010 8 8

 最初に書いておきますが、
たとえ欠陥が多くても、税率が低いうちは、
その欠陥は、許容されるということです。

書名 消費税のカラクリ
著者 斎藤 貴男  講談社現代新書

 消費税の問題点として、よく議論されるのが、次の三つでしょうか。
A逆進性、B益税、C景気(消費)を冷え込ませてしまう。
 Cについては、誰でもわかることなので省略します。
 Aの逆進性については、要するに、
貧しい人ほど、負担が大きくなるということです。
 Bについては、やや専門的になりますが、
「消費者が消費税のつもりで支払った金額のうち、
合法的に事業者の手元に残る金額を指している」ということです。
 以上の三点は、よく議論されていることで、
誰でも知っていなければならないことです。
 次に、著者の独自の指摘としては、
「第二章 消費税は中小・零細企業や独立自営業を壊滅させる」という章で、
税金で滞納が多い税目は、消費税であると指摘しています。
 おそらく、零細企業や独立自営業たちは、販売力が弱いので、
つまり販売の力関係では消費者に対して弱い立場なので、
実質的に消費税の価格転嫁ができないケースが多いのではないかということです。
 結局、消費者からは、実質的に消費税が取れていないが、
それでも、事業者としては、消費税を納めなければならない。
 つまり、消費税は間接税ですが、
販売力の弱い零細事業者にとっては、
実質的に「直接税」になっているということです。
零細事業者にしてみれば、
新たに「消費税」という直接税が新設されたと感じるかもしれません。
 事業税は赤字ならば納めなくてもよいのですが、
消費税は、たとえ赤字でも、売り上げがあるならば、納税義務があります。
 このように、消費税は、零細企業や独立自営業にとって、
厳しい税金ですので、免税点制度というものがあります。
この免税点は、従来は3000万円だったのですが、
2004年度からは、1000万円となりました。
 つまり、年商2000万円の事業者は、
免税点が3000万円のままならば、消費税の納税義務は発生しません。
 しかし、この免税点が1000万円に引き下げられると、
零細事業者は経営上厳しくなります。
多くの零細事業者に消費税の納税義務が発生するからです。
 ただし、消費税を払う消費者にとってみれば、
事業者の免税点が高いのは不満に思うでしょう。
 つまり、税率が低いうちは、たとえ欠陥があっても、
大目に見てもらえたのに、税率が上がれば、
国民の視線は厳しくなるということです。
しかし、零細事業者は経営上厳しいことには変わりありません。
 さらに、消費税は、事業者にとっては、複雑な税金です。
それは、「仕入れ税額控除」という仕組みがあるからです。
この仕組みのために、大げさに言えば、
消費税担当の事務員を雇う必要があるとまで言われます。
これは、大企業ならばともかく、
零細事業者にとっては大変な事務となっているでしょう。
 結論から言えば、消費税とは、
大企業・金持ちには不利にならない、
零細事業者や零細消費者にとっては、過酷な税金と言えるかもしれません。
 もちろん、どのような税目でも、税金である以上、
過酷と言えるでしょうが、
現在の消費税は、欠陥が多いという点で、
あるいは消費者と事業者の対立関係を生むという点で、
過酷と言えるかもしれません。
 否定的なことを多く書きましたが、
もちろん、消費税にはメリットもあると思います。
やはり、税金というものは、「広く」負担すべきです。
 直接税の場合は、脱税や節税が横行するリスクがあります。
さらに、景気の変動を受けやすいのです。
社会保障の財源として、景気の変動を受けやすい税制は問題があると思います。
 いずれにせよ、消費税という税目は、
他の税目に比べて、非常に論点が多い税目であり、
さらに、社会的な対立関係を生む税目でもあります。
 だから、政治家にとって、消費税とは、
思いつきで発言してはならない税目であり、
よく勉強してから発言すべき税目です。



























































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